中央教育審議会大学分科会 質保証システム部会における意見発表資料

 令和2年9月28日

全国公立短期大学協会 副会長 村井美代子(三重短期大学学長)

現在、公立短期大学は全国に14校あります。学科構成、学生総定員、教員数などは、本資料最終ページに添付いたしました別表の通りです。今般の意見発表に際し、質保証システム部会より、「検討の視点」や「想定される論点」として、多岐にわたるご提案をいただきました。各短期大学が抱えている課題は様々ですが、この中で、「認証評価と内部質保証」、「オンライン授業・遠隔授業の在り方」の2点について、公立短期大学における課題および意見を以下の通りとりまとめました。

【認証評価と内部質保証】

1.認証評価と自己点検・評価について

学校教育法の改正に伴い認証評価制度が導入され、平成16年度からすべての大学、短期大学、高等専門学校は、7年以内ごとに評価機関の評価を受けることが義務づけられました。公立短期大学では同制度の導入以前から、研究・教育の質の向上と改善のために自己点検・評価を実施しており、認証評価制度導入後も同様に実施し、報告書の作成を行っており、年度ごとに各大学ホームページ等にて公表しています。

「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」(平成30年11月26日中央教育審議会答申)において、「大学教育の質を保証するためには、第一義的には大学自らが率先して取り組むことが重要」とされている通り、自己点検・評価は次回認証評価のための準備ではなく、研究・教育の質保証、内部質保証のために各大学が自発的に実施する自己検証と位置付けています。各公立短期大学は、これまで認証評価で「適格」との評価をいただいておりますが、評価機構からいただく努力課題や今後の大学運営に向けてのアドバイス、外部評価委員会等からいただくご意見は、自己検証の際の客観性担保のための検証指標の1つとして、次回自己点検・評価に活かしています。

2.今後の認証評価について

(1)評価項目の柔軟性

平成16年度から開始された認証評価を、多くの大学はすでに複数回受審しています。前回から大きく変わらない部分については画一的な記述になりがちで、また評価項目が細かく設定されているため、記述内容が一部重複する項目もあるように思われます。必要な評価項目を絞り込み、記述項目に柔軟性が与えられれば、各大学の特色や実情が一層反映されることになるのではと考えます。

(2)危機管理の観点

台風や豪雨に伴う大規模災害が頻発しており、また今般の新型コロナウィルス感染症が拡大する中、各大学は活動指針や対応フローなどの策定に取り組んでいます。従来から認証評価では施設管理についての点検評価はありましたが、これに加えて、危機管理の観点からの内部質保証の検証も今後必要になるのではと考えます。

(3)認証評価にかかる費用

7年に一度とはいえ、規模の小さい公立の短期大学にとっては、認証評価にかかる費用は大きな財政負担になっています。今後少しでも負担軽減につながる検討があればと考えます。

 

3.「内部質保証」の課題

(1)リカレント教育や地域貢献事業における「質保証」

「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」では、社会人学生受け入れの拡大と、地域のニーズへの対応の必要性が指摘されています。公立短期大学は特に地域とのかかわりが深く、高齢者も含めた社会人学生の受け入れにも積極的に取り組んでいますが、こうした社会人学生と、高校を卒業したばかりの学生との間には、講義内容の理解度や、大学教育に求めるものに差異がある場合もあり、両者のニーズを満たす質保証の検討が今後の課題と考えます。

また、公立短期大学では地域貢献事業の一環として、学外の受講生を対象に、オープンカレッジや出前講座を積極的に開講しています。その多くが1回ないし数回の講座で、受講生も常連から一度だけ参加される方まで多様で、年齢幅も受講動機もさまざまであるため、アンケート等を実施して講義の改善・充実に努めてはいるものの、通常講義とは異なる質保証の難しさがあり、この点も今後の検討課題と捉えています。

 

(2)「質保証」と教員体制

別表の通り、公立短期大学は規模が小さく、専任教員数も少ない中で、多様な学科やコースを維持して学生確保に努め、充実したカリキュラムを展開しています。このため、兼務率(非常勤担当率)が高くならざるを得ません。公立短期大学の専任教員と非常勤講師の人数比率は、学科・専攻・コースによって差はあるものの、平均で35%:65%です。FD/SD活動の一環として、非常勤講師との懇談会や研修会を開催していますが、出席率は必ずしも高くありません。非常勤講師に3つのポリシーを理解していただき、教育の質向上の意識を専任教員と共有することが継続的な課題となっています。

 

【オンライン教育・遠隔授業に係る課題】

今般の新型コロナウィルス感染症の拡大を受け、公立短期大学でもオンライン授業や遠隔授業を実施しています。その中で、現在以下の点を検討課題と捉えています。

 

1.オンライン・遠隔授業の質保証

対面授業の場合、学生による授業評価アンケートの実施や、公開授業を実施して教員がお互いの講義に参加し、授業改善のための意見交換会を開催するなど、教育の質保証のための活動が一定程度確立しています。しかしながらオンライン授業や遠隔授業の場合、こうした従来型のFD活動が難しくなりました。オンデマンド方式の遠隔授業の場合は、学生が視聴する講義データをFD委員会で視聴するなど工夫はしていますが、テレビ会議方式の講義もあり、また後述するように学生の受講環境の差異の影響もあり、オンライン授業や遠隔授業の質保証が今後急ぎ検討すべき課題であると考えます。

 

2.情報環境の整備

公立短期大学では、「学費が低廉であること」を志望理由に挙げ、経済的に極めて厳しい環境で学んでいる学生が多数おります。オンライン授業や遠隔授業を受講する際、学生個人の情報機器の購入費用や通信容量の増加が負担になるケースが散見されます。大学のPC室の開放、学内Wi-Fi環境の整備などの対策は講じていますが、感染症の拡大状況によっては、学内のアクセスポイントが利用できなくなる可能性もあり、情報端末の所持や通信環境の整備状況など、学生個人の受講環境の差が、教育に直接的に影響を及ぼす可能性があります。ICT環境の充実と情報教育の重要性は認識してはおりますが、各大学の財政状況によっては、学内の情報関連機器や施設の充実が厳しい場合もあり、学内情報環境の整備や学生への支援等も含めて、教育の質保証という観点からも、今後の検討課題であると考えます。

3.多様な授業形態と質保証

新型コロナウィルス感染症の終息は、現時点でまだ見通しがたっていません。また、後期についてもオンラインや遠隔授業の全面実施を決定している大学もあります。一方、学生はオンライン授業や遠隔授業に一定程度慣れ、トラブルは少なくなったものの、友人や教員との直接的な交流が欠落した日々に孤立感をつのらせ、また特に短期大学では2年間という短い期間で、就職や編入学など、卒業後の進路を検討・選択しなければならず、この点でも不安の訴えが多くなっています。

こうした状況の中、今後は感染拡大防止対策を講じながら、少人数での対面授業や、対面と遠隔のハイブリット授業の実施が一層求められるものと思われ、コロナ禍における多様な形態のもとで、それぞれの授業の質保証の在り方の検討が今後必要と考えます。

 

別表 公立短期大学の学生数・教員数

 

短期大学・学科(学科総定員)※ 総定員 専任教員数 非常勤数 S/T比率 ※
岩手県立大学宮古短期大学部

・経営情報学科

200 17 7 11.8
岩手県立大学盛岡短期大学部

・生活科学科(100)

・国際文化学科(100)

200

 

 

28 27 7.1
山形県立米沢女子短期大学

・国語国文学科(200)

・英語英文学科(100)

・日本史学科(100)

・社会情報学科(100)

500 32 46 15.6
会津大学短期大学部

・産業情報学科(120)

・食物栄養学科(80)

・幼児教育学科(100)

300 33 115 9.1
川崎市立看護短期大学

・看護学科

240 28 23 8.6
大月短期大学

・経済科

400 17 38 23.5
岐阜市立女子短期大学

・英語英文学科(100)

・国際文化学科(120)

・食物栄養学科(120)

・生活デザイン学科(120)

460 37 41 12.4
静岡県立大学短期大学部

・歯科衛生学科(120)

・社会福祉学科(140)

・子ども学科(60)

320 39 87 8.2
静岡農林環境専門職大学短期大学部

・生産科学科

 

200 21 24 9.5

 

三重短期大学

・法経科第1部(200)

・法経科第2部(300)

・生活科学科(300)

800 30 88 26.7
島根県立大学短期大学部

・保育学科(80)

・総合文化学科(80)

160 13 57 12.3
倉敷市立短期大学

・保育学科(100)

・服飾美術学科(100)

・専攻科保育臨床専攻(10)

・専攻科服飾美術専攻(10)

220 22 32 10.0
大分県立芸術文化短期大学

・美術科(150)

・音楽科(130)

・国際総合学科(200)

・情報コミュニケーション学科(200)

・専攻科造形専攻(48)

・専攻科音楽専攻(40)

768

 

 

48 92 16.0
鹿児島県立短期大学

・文学科(120)

・生活科学科(120)

・商経学科(150)

・第二部商経学科(180)

570 44 77 13.0
総   計 5,338 409  754 13.1

(『令和2年度 公立短期大学実態調査表』より作成)

※令和2年度から静岡県立農林環境専門職大学短期大学部(生産科学科)が協会加入

※令和元年度国立大学S/T比率=9.5

令和元年度公立大学S/T比率=11.2

令和元年度私立大学S/T比率=19.6

(『公立大学ファクトブック 2019』より)

 

 

中教審の質保証システム部会において意見を発表しました