改正著作権法の「授業目的公衆送信補償金」に係る審査基準等に関するパブリックコメント

平成30年11月2日

文化庁著作権課長 水田 巧 殿

改正著作権法第104条の13第1項の規定に基づく「授業目的公衆送信補償金」の額の認可に係る審査基準及び標準処理期間に関するパブリックコメント(意見の提出)

全国公立短期大学協会 会長 鈴木道子

 

標記のことについて、本協会は、加盟大学からの意見を下記の通りとりまとめましたので、意見を提出いたします。

【改正によるメリット】

① 現状では、著作権の円滑処理が困難なことが多々あり、教育機関としても各教員の著作物利用状況等を把握することが困難となるため、正確な著作権利用が行われていない可能性がどうしても残ってしまいます。今回の改正により、どのような場合に申請が必要となるのかというガイドラインが策定されることから基準が明確になり、なおかつ、申請先が一本化されるため、著作権利用における煩雑な手続きが解消されます。また、正確に著作権を利用することで、利用者全体への意識付けも期待されます。

② 著作権の利用が広く可能となることで、学生に対する教育の質も向上することが予想されます。言葉だけでは伝えきれないこともあり、映像など視覚的に情報提供することで理解が深まることが可能となります。これまでは手続きが煩雑であったために利用を控えてきた教員も多かったと推察されますが、今回の改正により、教員の利用する機会が増えると考えられます。

③ 他方で、教員自身が著作権者になることもあり、適正に自身の権利が管理されることによって、意欲的に研究活動に取り組むようになると思われます。

【改正によるデメリット】

① 著作権者側の事情として、使用を制限したくなった場合にそれをスムーズに行えなくなったり、ライセンス料を独自に設定することができなくなる可能性があると思われます。

② これまでは教員が個別に著作権処理を行っていたとすると、一括処理をすることになれば、それらが事務局員の負担となることが考えられます。

③ルールの周知徹底をどのようにして行うのか、十分な検討と周知が必要です。

④ 補償金の支払いは、「例えば年1 回の支払い 生徒一人当たり○円(包括制)」といった方法を考えているようですが、大学は初等中等教育とは異なり、その大学がどのような学部・学科を備えているかによって著作物の利用頻度も利用方法も異なるため、単純に学生数に応じた補償金の支払い方法には疑問があります。特に短期大学は一般的に小規模で、備えている学科数も少ないため、総合大学とも事情が異なることを考慮してください。また、そもそも第35条第1 項に追加された授業目的公衆送信(e-learning や遠隔授業など)を行っておらず、すぐに行う予定のない大学もあります。

例えば全く授業目的公衆送信を行っていない大学が、授業目的公衆送信を頻繁に行っている大学と同じように費用を負担することは(学生数により負担の割合が異なるとしても)不公平に感じます。単純に学生数などに応じて一律に徴収するのではなく、利用実態に即した課金方法にしてください。著作物を利用すればそれに応じて費用が発生することは分かるが、利用しない場合にも費用が発生したり、僅かな利用に対して過大な費用が発生したりするような仕組みにはしないよう要望します。

⑤ 利用料金の設定にあたっては、具体的な調査方法及び料金算定の根拠を予め示して、適正な料金設定をしてください。

⑥ 定期的に、授業目的公衆送信の実態調査を行い、適切な料金体系の見直しを行ってください。